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アマチュア・オーケストラ演奏頻度を2025年の公演の集計を追加して更新しました。(2025.12.25)

2021年11月27日土曜日

MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その8:他の作曲家との比較 2.4.他の作曲家との比較)

2.分析結果の検討(承前)

2.4.他の作曲家との比較分析

2.4.1.非階層クラスタ分析(k-means法、クラスタ数=6)

                     1 2 3 4 5 6
  all                0 0 0 0 0 1:マーラーの分析対象全体(全交響曲+一部の歌曲)
  brahms         0 0 0 0 1 0:ブラームス
  bruckner       0 1 0 0 0 0:ブルックナー
  experimental 0 0 0 0 0 1:マーラーの全交響曲
  franck           0 0 0 0 1 0:フランク
  gluck            0 0 0 0 1 0:グルック
  haydn           0 0 1 0 0 0:ハイドン
  mahler          0 0 0 0 0 5:マーラーの交響曲5区分
  mozart          0 0 1 0 0 0:モーツァルト
  pergolesi       1 0 0 0 0 0:ペルゴレージ
  ravel             0 0 0 1 0 0:ラヴェル
  schumann     0 0 0 0 1 0:シューマン
  scriabin         0 0 0 1 0 0:スクリャービン
  shostakovich 0 0 0 1 0 0:ショスタコーヴィチ
  sibelius         0 0 0 0 0 1:シベリウス
  wam             0 0 1 0 0 0:モーツァルトの後期作品15曲※

※=レクイエムK.626、アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618、 クラリネット協奏曲K.622、ピアノ協奏曲第27番K.595、交響曲第39番K.543、第38番K.504といった作品と、 その周辺に、ピアノ協奏曲第20番K.466、第21番K.467、第23番K.488、第24番K.491、 弦楽四重奏曲K.465「不協和音」、クラリネット五重奏曲K.581、 交響曲第41番K.551、第40番K.550、アダージョK.540

各クラスタに対する分類をまとめると以下のようになる。

クラスタ1:ペルゴレージ=baroque
クラスタ2:ブルックナー
クラスタ3:ハイドン、モーツァルト全体・後期15曲=概ねclassic
クラスタ4:スクリャービン、ラヴェル、ショスタコーヴィチ=modern
クラスタ5:ブラームス、フランク、シューマン、グルック=概ねromantic1
クラスタ6:マーラーの分析対象全体・交響曲全体・交響曲5区分、シベリウス=romantic2

グルックがロマン派のクラスタに分類された点を除けば、シベリウスがマーラーと同じクラスタに分類された点も含めて、概ね自然な結果となっているように思われる。

後掲のクラスタリング結果のプロットのレジェンドを以下に示す。

ab:ブルックナー
asc:スクリャービン
cf:フランク
chwg:グルック
dsch:ショスタコーヴィチ
fjh:ハイドン
jb:ブラームス
jbp:ペルゴレージ
js:シベリウス
gm:マーラーの分析対象全体(交響曲+一部の歌曲)
gm_sym:マーラーの交響曲全体
gm_sym1:マーラー第1交響曲
gm_sym2-4:マーラー第2~4交響曲
gm_sym5-7:マーラー第5~7交響曲
gm_sym8:マーラー第8交響曲
gm_LE_9_10:マーラー「大地の歌」・第9,10交響曲
mr:ラヴェル
rsch:シューマン
wam:モーツァルト
wam1:モーツァルトの後期作品15曲



上記のプロットでは、左下の青い楕円(6)がマーラーの作品群のクラスタである。2つの成分よりなる空間の中で、上側を占めるmodernなクラスタ(4)、右下に広がるロマン派のクラスタ(5)等、他の作曲家との分離は明瞭であろう。細かく見ても、同一クラスタの分類されたシベリウス(js)は同一クラスタ内で最も右寄りに位置しており、ブルックナー(ab)やフランク(fr)との距離が近い。ロマン派のクラスタ(5)でもグルック(chwg)の位置は右下隅に離れていて、古典派のクラスタ(3)との距離、或いはペルゴレージ(jbpとして点でプロットされている)が近い。こうした点から、上記の分類は概ね妥当なものと考えることができ、かつ、和音の出現頻度という特徴量によってマーラーの作品を他の作曲家から独立した一つのまとまりとして分類することに成功していることが確認できたと考える。


2.4.2.階層クラスタ分析

階層クラスタ分析では、3種類のアルゴリズムでの計算結果を確認したが、階層の順序に若干の相違が見られるとは言え、結果には共通性も多く、概ね安定的であると言って良いように思われる。即ち、大きく3つの以下のグループに分かれる。
  • マーラーのクラスタ(概ね非階層クラスタ分析のクラスタ6に相当:マーラー以外にはシベリウスが3分析共通で含まれ、average法、ward法では更にラヴェルが含まれる)
  • modernなクラスタ(概ね非階層クラスタ分析のクラスタ4に相当:3分析共通でスクリャービン、ショスタコーヴィチが含まれ、complete法では非階層クラスタ分析と同様ラヴェルが含まれるのに対して、average法、ward法では時代的に最も遡るペルゴレージが含まれる)
  • 上記以外の作曲家のクラスタ:古典派およびロマン派のクラスタで、寧ろこちらの方が規模が大きく、主要なクラスタである。complete法ではペルゴレージが含まれるが、このクラスタ内の最初の階層で他と分岐しており、やや他とは距離があることがわかる(実際、既述の通り、average法、ward法では別クラスタに移動する)。
分類上、境界にあって不安定なのは、ラヴェルとペルゴレージである。ペルゴレージについては古典派とロマン派を典型とする音楽に先行する時期のものとして異質的である可能性もあるが、単にサンプル数が少ないために偏りが生じている可能性もあるだろう。

いずれにしても階層クラスタ分析では、3種とも類似した構造が得られただけでなく、非階層クラスタ分析と概ね同様の分類が得られており、和音の出現頻度という特徴量によってマーラーの作品を他の作曲家から独立させて分類することが出来ることが更に裏付けられたと考える。

後掲のデンドログラム共通のレジェンドを以下に示す。

ab:ブルックナー
asc:スクリャービン
cf:フランク
chwg:グルック
dsch:ショスタコーヴィチ
fjh:ハイドン
jb:ブラームス
jbp:ペルゴレージ
js:シベリウス
gm:マーラーの分析対象全体(交響曲+一部の歌曲)
gm_sym:マーラーの交響曲全体
gm_sym1:マーラー第1交響曲
gm_sym2-4:マーラー第2~4交響曲
gm_sym5-7:マーラー第5~7交響曲
gm_sym8:マーラー第8交響曲
gm_LE_9_10:マーラー「大地の歌」・第9,10交響曲
mr:ラヴェル
rsch:シューマン
wam:モーツァルト
wam1:モーツァルトの後期作品15曲

(a)complete法


(b)average法

(c)ward法

2.4.3.主成分分析

scale=Fでのprcompの結果の寄与率・累積寄与率を確認すると以下の通りであった。


上記より累積寄与率が90%を超える第4主成分迄を対象にプロットを行い、得点と負荷を確認することとした。

第1主成分で約1/2、第2主成分で8割超を占めており、それに対して第3主成分以降はいずれも数%レベルの寄与率であるから、第1、第2主成分とそれ以降は区別して扱うべきであろう。大まかな傾向と言うことであれば、第1、第2主成分のプロットで確認することが可能であろう。

以下に第1主成分を横軸・第2主成分を縦軸にとったbiplotを示す。
ラベルの意味はこれまでのクラスタリングと同様で、以下の通り。

ab:ブルックナー
asc:スクリャービン
cf:フランク
chwg:グルック
dsch:ショスタコーヴィチ
fjh:ハイドン
jb:ブラームス
jbp:ペルゴレージ
js:シベリウス
gm:マーラーの分析対象全体(交響曲+一部の歌曲)
gm_sym:マーラーの交響曲全体
gm_sym1:マーラー第1交響曲
gm_sym2-4:マーラー第2~4交響曲
gm_sym5-7:マーラー第5~7交響曲
gm_sym8:マーラー第8交響曲
gm_LE_9_10:マーラー「大地の歌」・第9,10交響曲
mr:ラヴェル
rsch:シューマン
wam:モーツァルト
wam1:モーツァルトの後期作品15曲


非階層クラスタ分析(k-means法)の結果をclusplotを使用して主成分平面上でプロットしたものと比べると、水平・垂直軸とも成分の正負の方向が逆転しており、丁度180度回転させたものと概ね一致していることがわかる。階層クラスタ分析で、手法により分類に揺れのあったラヴェル(mr)とペルゴレージ(jbp)は、ここではいずれも下三分の一くらの高さにプロットされており、ラヴェルがマーラーと同じく左側、ペルゴレージは古典派と同様右側にプロットされて、下にあるショスタコーヴィチ、スクリャービンとの間にあることから、主成分分析の結果が階層クラスタ分析における揺れの発生と矛盾ないものであることが確認できる。

以下では分析対象の各グループを時代区分に基づくラベルによってクラス分けしたものについて、ggbiplotで第1,2主成分、第2,3主成分、第3,4主成分でプロットした結果、および第1~第4主成分の主成分得点・負荷を示す。以下のグラフ共通でクラスと色、およびクラスに帰属するグループの対応を示すと以下の通りである。
  • baroque(赤):ペルゴレージ
  • classic(黄土色):グルック、ハイドン、モーツァルト
  • gm_all(黄緑):マーラーの分析対象全体(交響曲+一部の歌曲)
  • gm_sym(緑):マーラーの交響曲全体
  • mahler(青緑):マーラーの交響曲5区分
  • romantic1(水色):シューマン、ブラームス、ブルックナー、フランク
  • romantic2(青):シベリウス
  • modern(紫):スクリャービン、ラヴェル、ショスタコーヴィチ
  • wam(赤紫):モーツァルトの後期作品15曲

負荷は転回や解離を除いて和音をビット列化したものの十進数表現である。

1:単音(mon)、3 :五度(dy:5)、5 :長二度(dy:+2)、9 :短三度(dy:-3)、17 :長三度(dy:+3)、33 :短二度(dy:-2)、65 :増四度(dy:aug4)、25 :短三和音(min3)、19 :長三和音(maj3)、77 :属七和音(dom7)、93 :属九和音(dom9)、27 :付加六(add6)、69 :イタリアの増六(aug6it)、73 :減三和音、273(dim3) :増三和音(aug3)、51 :長七和音(maj7)、153 :トリスタン和音(tristan)、325 :フランスの増六(aug6fr)

(a)第1主成分(横軸)・第2主成分(縦軸)

横軸の第1主成分方向では、上半側でマーラー(青緑, mahler)は左側、ロマン派(青, romantic)が中央、古典派(黄土色, classic)が右と明確に分離されていることがわかる。縦軸の第2主成分方向では、下に近々現代(水色, modern)、上にそれ以外のグループがプロットされており、その中でもラヴェルのみほぼ中央の左寄りに位置し、同じ高さの右隅にペルゴレージ(赤, baroque)がプロットされているのは、biplotの結果で確認した通りである。マーラーの全交響曲の平均(緑, gm_sym)がマーラー(青緑)の楕円の中央にプロットされているのに対して、それに一部の歌曲を加えた平均(黄緑, gm_all)はわずかに右にプロットされていることが確認できる。階層クラスタ分析で3種類の分析のいずれもがマーラーと同じ分類に含めたシベリウス(紫, romantic2)は、マーラーの青緑の楕円の中にプロットされており、非階層クラスタ分析および階層クラスタ分析の結果と一致していることがわかる。

上記により、第1主成分と第2主成分の組み合わせによって、マーラーの他の作曲家の作品と比較した時の特徴が説明できることが確認できた。

(b)第2主成分(横軸)・第3主成分(縦軸)

(c)第3主成分(横軸)・第4主成分(縦軸)

(d)第1主成分得点・負荷

第1主成分・第2主成分のプロットにおいては横軸方向の成分であった第1主成分の得点について見ると、マーラーは全てマイナスで、マーラー同様にマイナスなのは同じく左側にプロットされていたシベリウスとラヴェルであること、逆にプラス方向なのは右側にあったペルゴレージ(赤)と古典派(橙色)であり、ロマン派(青)は中央にあって、総じてプラス寄りではあるが中立的、近現代(水色)でもスクリャービンとショスタコーヴィチもロマン派同様中立的であることがわかる。またマーラーの中では特に第8交響曲が最も大きな偏りを持っていることも確認できる。

負荷については、マーラーがマイナス側なので第1主成分に対する寄与がマイナスになっている(つまりマーラーを特徴づけていると考えられる)和音の種類を確認すると、最も大きいのが付加六(add6)で、長七和音(maj7)、空虚五度(dy:5)が続くことがわかる。一方でペルゴレージ(赤)と古典派(橙色)を特徴づけるのは、単音(mon)は措くとして、長三和音(maj3)と長三度(dy:+3)が多く、それに続くのが短三度(dy:-3)、属七(dom7)であることがわかる。

またラヴェルやシベリウスといった各種クラスタ分析が同一カテゴリに分類した作曲家がここでもマーラーと特徴を共有する一方で、ロマン派の作曲家は勿論、近現代の作曲家(ここではスクリャービン、ショスタコーヴィチ)よりも古典派からの隔たりが大きいことがわかる。従って、第1主成分に対してマイナス方向がマーラーを特徴づける要素であることが確認できる一方で、それだけだとシベリウスやラヴェルといった概ね世代を同じくする作曲家との区別はつかないということも言える。


(e)第2主成分得点・負荷

第2主成分については、第1、第2主成分によるプロットでは縦軸で、マーラーは主として上半側だから、プラスの方向に偏っていることが窺えたが、以下でも特に中期を中心にして、全体としてプラス寄りであることが確認できる。またマーラー同様に第2主成分についてプラスの傾向を持つのは、今度は第1主成分とは逆に主として古典派(黄色)であり、ロマン派(青)は傾向が内部で分裂し、マーラーと同じ傾向なのはブルックナーであることがわかる。逆にマーラーとは対立するマイナス方向の傾向を持つのは、今度はラヴェルも含めた近代のグループ(水色:ショスタコーヴィチ、スクリャービンとラヴェル)とペルゴレージ(赤)であり、シベリウス、シューマンはグルックとともに中立的であると見ることができそうである。すると第1主成分と第2主成分を組み合わせることでマーラーの主な特徴を規定することができることがわかる。

そこで負荷の側を見てみると、第2主成分にプラスの寄与が大きいのは長和音(maj3)・属七(dom7)であり、これは第一主成分のプラス要素でもあった古典的ドミナントシステムを示唆するが、その一方で第1主成分では大きくマイナスに触れていた付加六(add6)は、ここではややプラスで、その点が第1主成分との差であるとともに、全般に見た時、寧ろ単音・重音が優位か、三和音、和音が優位かという点にこの成分の大きな特徴があるように窺える。

従って負荷についても同様に第1主成分と第2主成分の組み合わせでマーラーの特徴づけを試みるならば、古典派と比較した場合には古典派的な機能和声によるドミナントシステムとはやや異なった調的システムの機能がより優位であり、それが付加六の優越ということに繋がっていそうである。その一方で、第1主成分においては区別がつかなった概ね世代を同じくする作曲家との区別については第2主成分において行え、ここでは3和音・4和音が優位なマーラーに対して、そうではない近現代の他の作曲家との区別ができそうである。なおここで近現代において単音・重音の優位であると見られるような傾向があるのには、本分析で分析対象としている和音が、機能和声にて頻繁に用いられる和音に限定されていて、近現代で用いられるようなより複雑な和音が分析の対象となっていないことが影響している可能性があることに注意すべきだろう。

以上より、マーラーの特徴づけとしては、典型的に古典派的なドミナントシステムに対して付加六の使用を中心とした別のシステムが存在することを窺わせる一方で、古典的なシステムが機能しなくなったわけではなく、機能和声で用いられる三和音・四和音が依然として用いられている点では古典派と共通しており、近現代におけるような複雑な和音の割合が高くなっているわけではないということが言えるのではないか、という点が本分析の結果から言いうるのではなかろうか。

最後に、これまでの検討結果を整理した表を掲げる。本分析においては優越した2つの成分によってマーラーの特徴が取り出せることが確認できたものの、それぞれの成分が持つ意味について、仮説として提示しうるレベルには到達できなかったため、その点を今後の課題としたい。





(f)第3主成分得点・負荷

(g)第4主成分得点・負荷



[ご利用にあたっての注意] 公開するデータは自由に利用頂いて構いません。あくまでも実験的な試みを公開するものであり、作成者は結果の正しさは保証しません。このデータを用いることによって発生する如何なるトラブルに対しても、作成者は責任を負いません。入力として利用させて頂いたMIDIファイルに起因する間違い、分析プログラムの不具合に起因する間違いなど、各種の間違いが含まれる可能性があることをご了承の上、ご利用ください。 (2021.11.24 暫定版公開, 11.26仮公開, 11.27公開, 11.28分析コメントを追記)

MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その8:他の作曲家との比較の再分析 2.3.和音出現頻度分布)

2.分析結果の検討(承前)

2.3.各グループ毎の和音出現頻度分布

2.3.1.マーラーの作品全体(64ファイル)

  • 「大地の歌」、交響曲第1番~第10番(クック版)計11曲の各楽章(50)
  • 「さすらう若者の歌」(4)
  • 「リュッケルトによる5つの歌曲」(5)
  • 「子供の死の歌」から第1曲「いま太陽は晴れやかに昇る」 (1)
  • 「子供の魔法の角笛」から「夏の交替」「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」「ラインの小伝説」「美しいトランペットが鳴り響くところ」(4)
1:単音(mon)、3 :五度(dy:5)、5 :長二度(dy:+2)、9 :短三度(dy:-3)、17 :長三度(dy:+3)、33 :短二度(dy:-2)、65 :増四度(dy:aug4)、25 :短三和音(min3)、19 :長三和音(maj3)、77 :属七和音(dom7)、93 :属九和音(dom9)、27 :付加六(add6)、69 :イタリアの増六(aug6it)、73 :減三和音、273(dim3) :増三和音(aug3)、51 :長七和音(maj7)、153 :トリスタン和音(tristan)、325 :フランスの増六(aug6fr)

2.3.2.マーラーの交響曲全体(「大地の歌」、交響曲第1番~第10番(クック版)計11曲の各楽章:50ファイル)

2.3.3.第1交響曲(楽章毎:4ファイル)

2.3.4.第2~4交響曲(楽章毎:15ファイル)

2.3.5.第5~7交響曲(楽章毎:14ファイル)

2.3.6.第8交響曲(楽章毎:2ファイル)

2.3.7.「大地の歌」・第9,10交響曲(楽章毎:15ファイル)

[ご利用にあたっての注意] 公開するデータは自由に利用頂いて構いません。あくまでも実験的な試みを公開するものであり、作成者は結果の正しさは保証しません。このデータを用いることによって発生する如何なるトラブルに対しても、作成者は責任を負いません。入力として利用させて頂いたMIDIファイルに起因する間違い、分析プログラムの不具合に起因する間違いなど、各種の間違いが含まれる可能性があることをご了承の上、ご利用ください。(2021.11.23 暫定版公開, 11.26仮公開, 11.27公開)

MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その8:他の作曲家との比較の再分析 2.2.和音出現順位)

2.分析結果の検討(承前)

2.2.各グループ毎の和音出現順位

グラフのラベルは和音の構成音を乖離・転回を無視してビット列表現したものの十進表現であり、主要なものを示すと以下の通りである。

1:単音(mon)、3 :五度(dy:5)、5 :長二度(dy:+2)、9 :短三度(dy:-3)、17 :長三度(dy:+3)、33 :短二度(dy:-2)、65 :増四度(dy:aug4)、25 :短三和音(min3)、19 :長三和音(maj3)、77 :属七和音(dom7)、93 :属九和音(dom9)、27 :付加六(add6)、69 :イタリアの増六(aug6it)、73 :減三和音、273(dim3) :増三和音(aug3)、51 :長七和音(maj7)、153 :トリスタン和音(tristan)、325 :フランスの増六(aug6fr)


2.2.1.分析対象となったマーラー作品の全体(64ファイル)

  • 「大地の歌」、交響曲第1番~第10番(クック版)計11曲の各楽章(50)
  • 「さすらう若者の歌」(4)
  • 「リュッケルトによる5つの歌曲」(5)
  • 「子供の死の歌」から第1曲「いま太陽は晴れやかに昇る」 (1)
  • 「子供の魔法の角笛」から「夏の交替」「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」「ラインの小伝説」「美しいトランペットが鳴り響くところ」(4)


2.2.2.マーラーの交響曲全体(「大地の歌」、交響曲第1番~第10番(クック版)計11曲の各楽章:50ファイル)


2.2.3.第1交響曲(楽章毎:4ファイル)


2.2.4.第2~4交響曲(楽章毎:15ファイル)


2.2.5.第5~7交響曲(楽章毎:14ファイル)


2.2.6.第8交響曲(楽章毎:2ファイル)


2.2.7.「大地の歌」・第9,10交響曲(楽章毎:15ファイル)
 
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MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その8:他の作曲家との比較の再分析 2.1.和音出現頻度)

2.分析結果の検討

2.1.マーラーの交響曲の和音出現頻度

2.1.1.グループ内での和音出現回数の単純合計による出現頻度

 ヘッダ1行目は各グループラベル

  • gm:対象となったマーラー作品のファイル全体
  • gm_sym:交響曲全体
  • gm_sym1:第1交響曲
  • gm_sym2-4:第2~4交響曲
  • gm_sym5-7:第5~7交響曲
  • gm_sym8:第8交響曲
  • gm_symLE-9-10:「大地の歌」および第9,10交響曲

 ヘッダ2行目の左は対象ファイル数(=楽章数)、右側が合計拍数

 本体の左は和音パターン、右側が100拍毎の出現頻度




2.1.2.ファイル毎の和音出現割合のグループ内累計による出現頻度

 ヘッダ1行目は各グループラベル

  • gm:対象となったマーラー作品のファイル全体
  • gm_sym:交響曲全体
  • sym1:第1交響曲
  • sym2-4:第2~4交響曲
  • sym5-7:第5~7交響曲
  • sym8:第8交響曲
  • symLE-9-10:「大地の歌」および第9,10交響曲

 ヘッダ2行目の左は対象ファイル数(=楽章数)、右側が合計拍数

 本体の左は和音パターン、右側が100拍毎の出現頻度



2.2.他の作曲家の作品の和音出現頻度

2.2.1.グループ内の和音出現回数の単純合計による出現頻度

(1)ペルゴレージ~ブラームス

ヘッダ1行目は各グループラベル

  • jbp:ペルゴレージ
  • chwg:グルック
  • fjh:ハイドン
  • wam:モーツァルト全体
  • wam1:モーツァルト後期15作品
  • rsch:シューマン
  • jb:ブラームス

 ヘッダ2行目の左は対象ファイル数(=楽章数)、右側が合計拍数

 本体の左は和音パターン、右側が100拍毎の出現頻度



(2)フランク~スクリャービン

ヘッダ1行目は各グループラベル

  • cf:フランク
  • ab:ブルックナー
  • js:シベリウス
  • dsch:ショスタコーヴィチ
  • mr:ラヴェル
  • asc:スクリャービン

 ヘッダ2行目の左は対象ファイル数(=楽章数)、右側が合計拍数

 本体の左は和音パターン、右側が100拍毎の出現頻度



2.2.2.ファイル毎の和音出現割合のグループ内累計による出現頻度

(1)ペルゴレージ~ブラームス

ヘッダ1行目は各グループラベル

  • jbp:ペルゴレージ
  • chwg:グルック
  • fjh:ハイドン
  • wam:モーツァルト全体
  • wam1:モーツァルト後期15作品
  • rsch:シューマン
  • jb:ブラームス

 ヘッダ2行目の左は対象ファイル数(=楽章数)、右側が合計拍数

 本体の左は和音パターン、右側が100拍毎の出現頻度



(2)フランク~スクリャービン

ヘッダ1行目は各グループラベル

  • cf:フランク
  • ab:ブルックナー
  • js:シベリウス
  • dsch:ショスタコーヴィチ
  • mr:ラヴェル
  • asc:スクリャービン

 ヘッダ2行目の左は対象ファイル数(=楽章数)、右側が合計拍数





[ご利用にあたっての注意] 公開するデータは自由に利用頂いて構いません。あくまでも実験的な試みを公開するものであり、作成者は結果の正しさは保証しません。このデータを用いることによって発生する如何なるトラブルに対しても、作成者は責任を負いません。入力として利用させて頂いたMIDIファイルに起因する間違い、分析プログラムの不具合に起因する間違いなど、各種の間違いが含まれる可能性があることをご了承の上、ご利用ください。(2021.11.23 暫定版公開, 11.26仮公開, 11.27公開)

MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その8:他の作曲家との比較の再分析 1.再分析の方針と結果の要約)

1.再分析の方針

 これまでMIDIファイルを入力とした和音(コード)の出現頻度に基づマーラーの交響曲作品の分析の一環として、他の作曲家の作品との比較をMIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その5:全拍対象・比較対照作品追加・傾向分析)において実施した。そこではマーラーの交響曲作品と合計33人の作曲家(アイヴズ、シベリウス、ブラームス、ブルックナー、ショスタコーヴィチ、モーツァルト、シューマン、スクリャービン、スメタナ、フランク、ハイドン、シュニトケ、ヴェーベルン、バルトーク、ベートーヴェン、ベルリオーズ、ドヴォルザーク、エルガー、メンデルスゾーン、ワーグナー、ラフマニノフ、シューベルト、チャイコフスキー、ペッテション、ストラヴィンスキー、ヴィエルヌ、シュトラウス、シェーンベルク、ラヴェル、マニャール、グルック、ホルスト、ヤナーチェク)の交響曲ないし交響的な作品のMIDIファイルに含まれる基本的な和音25種類(単音、完全五度、長二度、短三度、長三度、短二度、増四度、短三和音、長三和音、属七和音、属九和音、付加六、イタリアの増六、減三和音、増三和音、長七和音、トリスタン和音、フランスの増六 、減三+減七、減三+短七、増三+長七、短三+長七)の出現頻度のデータに基づく分類を行った。ここでは前回の分析で生じた問題点を踏まえ、他の作曲家との比較において実施した分析方針の見直しの内容と、その方針に基づいて実施した分析の結果を報告する。

1.1.対照群となる他の作曲家の作品の設定

 前回の分析では、利用できるMIDIファイルの制約もあり、他の作曲家の作品の選択が恣意的となり、特にサンプル数の少ない作曲家については、一、二の特定の作品との比較を行っているに過ぎない場合が多かった。そこで今回は、作曲家間での比較となるように、本ブログの姉妹ブログである「山崎与次兵衛アーカイブ」 で取り上げている作曲家のうち、MIDIファイルがある程度まとまって入手可能な作曲家を対象とすることにした。取り上げた作曲家は以下の12人である。更に今回は、器楽曲のみならず、声楽曲も含めることにした。以下の括弧内の数字は、それぞれ分析に用いたファイル数, 和音数の合計を表す。なお和音はMIDIファイルにおける各拍毎の和音を抽出、転回や解離による違いを区別しない点は従来通りである。

  • ペルゴレージ(ファイル数:28, のべ拍数:8019)         
  • グルック(ファイル数:19, のべ拍数:4791)
  • ハイドン(ファイル数:110, のべ拍数:123061) 
  • モーツァルト(ファイル数:957, のべ拍数:636619) 
  • シューマン(ファイル数:102, のべ拍数:133234) 
  • ブラームス(ファイル数:132, のべ拍数:188627) 
  • ブルックナー(ファイル数:70, のべ拍数:61947) 
  • フランク(ファイル数:62, のべ拍数:59554) 
  • シベリウス(ファイル数:17, のべ拍数:17769) 
  • スクリャービン(ファイル数:62, のべ拍数:18640) 
  • ラヴェル(ファイル数:55, のべ拍数:39135) 
  • ショスタコーヴィチ(ファイル数:71, のべ拍数:39229)

  なおモーツァルトについては、本ブログの姉妹ブログである山崎与次兵衛アーカイブの記事ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)で言及したモーツァルトの作品のサブセット15曲(レクイエムK.626、アヴェ・ヴェルム・コルプスK.618、 クラリネット協奏曲K.622、ピアノ協奏曲第27番K.595、交響曲第39番K.543、第38番K.504、ピアノ協奏曲第20番K.466、第21番K.467、第23番K.488、第24番K.491、 弦楽四重奏曲K.465「不協和音」、クラリネット五重奏曲K.581、 交響曲第41番K.551、第40番K.550、アダージョK.540)を比較対象に加えることにした。

 今回もファイル数および分析対象の拍毎の和音数の両方において、作曲家によりかなりのばらつきがあるが、これは基本的には現在、私の手元にあって利用可能なファイルを対象にした結果である。但し、Webで取得できるファイルの全体ということだと、特にファイル数の多いハイドンとモーツァルトはまだ未取得のものが多く、今後サンプルを増やすことが可能であり、ブラームスやシューマンについてもう若干の追加が可能である一方で、マーラー同様、他の作曲家については、調べた限りでは今回MIDIファイルを用意できた範囲がほぼ限界のようである。またブログで取り上げている作曲家のうち、近現代を中心とした上記以外の作曲家については、MIDIファイルがほとんどないか、様式的に和音の種別の分析という方法に馴染まないので今回の分析対象からは除外した。(一方で、追加となった作曲家はペルゴレージのみ。)逆にMIDIの数だけ考えれば、上記以外にも比較対象となる可能性のある作曲家は他にも数多くいるだろうが、これもまた、現時点で手元にあって、直ちに分析可能なMIDIファイルがあるという点で、上記の作曲家に限定して分析を行うことにした。ちなみに実験群であるマーラーについては全体で64ファイル、和音数89625、交響曲のみに限定すると50ファイル、和音数84567が対象となる。全体として前回の分析と比べると作曲家の数は大幅に減っているが、分析に用いたファイル数は、前回が300ファイルであったのに対して、今回はマーラーも含めて合計1749ファイル、和音数は1420250であり、かなり規模が大きくなっている。


1.2.特徴ベクトルの選択

 前回の分析では、作品ないし作品を構成する楽章単位で作成されたMIDIファイル単位で各ファイル毎の和音の出現頻度の特徴ベクトルを用いて比較を行い、それをグルーピングして検討を行ったが、今回の分析での比較にあたっては各作曲家毎に和音の出現頻度の平均値をとって各作曲家を代表する特徴ベクトルとし、作曲家間での比較を行うことにした。マーラー以外の作曲家については、時代区分に応じて以下のようなカテゴリを設定した。

  • baroque:ペルゴレージ
  • classic:グルック、ハイドン、モーツァルト
  • romantic:シューマン、ブラームス、ブルックナー、フランク
  • romantic2:シベリウス
  • modern:スクリャービン、ラヴェル、ショスタコーヴィチ

 一方でマーラーについては、分析となっているマーラー作品全体(全交響曲と一部の歌曲)、マーラーの交響曲作品全体の平均だけではなく、交響曲を創作時期に基づく5グループを設定し、それぞれの平均値のベクトルを使用することとした。従って、特徴ベクトルの作成単位は以下の通りとなる。

  • gm:マーラーの分析対象全体(交響曲+一部の歌曲)
  • gm_sym:マーラーの交響曲全体
  • gm_sym1:マーラー第1交響曲
  • gm_sym2-4:マーラー第2~4交響曲
  • gm_sym5-7:マーラー第5~7交響曲
  • gm_sym8:マーラー第8交響曲
  • gm_LE_9_10:マーラー「大地の歌」・第9,10交響曲

 採用した区分の設定にあたっての検討の詳細については、本分析と並行して実施した交響曲の分類の分析の方針を記載した記事MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度から見たマーラー作品(その7:交響曲の分類の再分析 1.再分析の方針)を参照のこと。

 分析対象とする和音の種類は以下の通りであり、減三+減七、減三+短七、増三+長七、短三+長七の四種を減らし、合計21種類とした(ただし単純な集計を行う場合には、減三+減七、減三+短七、増三+長七、短三+長七の4種類についても集計を行った)。以下、和音の名称の前の数字は和音の構成音をビット列で表現したものを10進化した値、名称の後の括弧内はラベルを表す。

1:単音(mon)、3 :五度(dy:5)、5 :長二度(dy:+2)、9 :短三度(dy:-3)、17 :長三度(dy:+3)、33 :短二度(dy:-2)、65 :増四度(dy:aug4)、25 :短三和音(min3)、19 :長三和音(maj3)、77 :属七和音(dom7)、93 :属九和音(dom9)、27 :付加六(add6)、69 :イタリアの増六(aug6it)、73 :減三和音(dim3)、 273:増三和音(aug3)、51 :長七和音(maj7)、153 :トリスタン和音(tristan)、325 :フランスの増六(aug6fr)

 更に平均の取り方として、基本となる各グループの全作品・全楽章における各和音の出現頻度を単純に合計した上で出現割合を求めるやり方以外に、各楽章毎に各和音の出現割合を求めて、各グループに属する作品の平均を求めるやり方の集計結果も用意した。ここでは前者を「(累計)和声出現割合」と呼ぶのに対して、後者を「平均和音出現割合」と呼んで区別することにする。前者では単純に規模の大きい、拍数の多い楽章の寄与が大きくなるのに対して、後者では楽章の規模に依らず割合の平均が求められるため、単純な和音の出現回数から見ると、小規模作品の寄与が拡大されることになる。後者は作品・楽章という単位を完結した独立したものとみて、規模によらずそれぞれの和音の出現傾向を平均化していることになる。


1.3.分析手法の選択

 マーラーの交響曲作品群内の区分5種類に加えて、マーラーのMIDIファイル全体、全交響曲の7種と他の12人の作曲家の都合19種類の特徴ベクトルに対して各ベクトルの要素数は上記の17種の和音であり、比較対象が少ないことから、因子分析は用いず、主成分分析と階層的クラスタ分析(方式としてcomplete法, average法, ward法)、非階層的クラスタ分析(k-means法)を行うことにした。また作品毎、楽章毎に規模や性格が大きく異なることから、和声の出現頻度の分布の分散が大きい傾向が窺えた。そこで各作曲家毎の各和音の出現頻度の分布を確認するために、上位20種類の和音出現順位とともに、箱ひげ図(boxplot)を用いることにした。


1.4.分析に用いたツール・ライブラリ

 分析はすべてR言語(version 4.1.0 (2021-05-18版)を用いて行った。
 分析履歴を保存した。

   A.非階層クラスタリング:kmeansを使用。
  クラスタ数は今回の分析で設定した作曲家の時代区分を考慮して6とした。
  結果のグラフ表示には、clusterライブラリのclusplotを使用。  
 B.階層クラスタリング:hclustを使用。
  complete法, average法, ward法の3種類を使用。
 C.主成分分析:prcompを使用。
  特徴ベクトルの作成にあたって規格化済であることから、scale=F。
    累積寄与率90%を目安として、第4主成分までについて負荷と主成分得点を計算。
  結果のグラフ表示には、ggbiplotライブラリのggbiplotを使用。
  負荷と主成分得点はbarplotでグラフ化。


1.5.分析結果の要約

本分析において選択した非階層クラスタ分析、階層クラスタ分析、主成分分析のいずれの結果においても和音の出現頻度という特徴量によってマーラーの作品を他の作曲家から独立した一つのまとまりとして分類することができた。

本分析に際して事前に設定した時代区分に概ね沿った分類結果が得られたが、必ずしも完全に対応しているわけではなく、一部では揺らぎが発生している。ただし各分析間の結果での揺らぎのパターンは同一であり、矛盾は発生しておらず、分類の安定性は高いと考えられる。

マーラー/ロマン派/古典派の区分が明確な点は各分析の結果に共通するが、単一の成分のみだと上記の区分までは行えても、概ね世代を同じくする作曲家(ここではシベリウスとラヴェルが該当する)との区別は明瞭でなく、主成分分析における第1主成分と第2主成分の組み合わせによってマーラーの他の作曲家の作品と比較した時の特徴が説明できる。従って、以下のような第1主成分を横軸、第2主成分を縦軸としたプロットにおける分布の偏りとしてマーラーの独自性を確認することができる。(左上の緑の楕円:マーラー、中央上の青の楕円:ロマン派、右上の黄土色の楕円:古典派、下の水色の楕円:近現代)


第1主成分と第2主成分の組み合わせでマーラーの特徴づけを試みるならば、古典派と比較した場合には古典派的な機能和声によるドミナントシステムとはやや異なった調的システムの機能がより優位であり、それが付加六の優越ということに繋がっていそうである。概ね世代を同じくする作曲家との区別については第2主成分において行え、ここでは3和音・4和音が優位なマーラーに対して、そうではない近現代の他の作曲家との区別が可能に見える。なおここで近現代において単音・重音の優位であると見られるような傾向があるのには、本分析で分析対象としている和音が、機能和声にて頻繁に用いられる和音に限定されていて、近現代で用いられるようなより複雑な和音が分析の対象となっていないことが影響している可能性がある。

以上より、マーラーの特徴づけとしては、典型的に古典派的なドミナントシステムに対して付加六の使用を中心とした別のシステムが存在することを窺わせる一方で、古典的なシステムが機能しなくなったわけではなく、機能和声で用いられる三和音・四和音が依然として用いられている点では古典派と共通しており、近現代におけるような複雑な和音の割合が高くなっているわけではないということが言えるのではないか、という点が本分析の結果から導かれると考える。

最後に、これまでの検討結果を整理した表を掲げる。本分析においては優越した2つの成分によってマーラーの特徴が取り出せることが確認できたものの、それぞれの成分が持つ意味については、上述の仮説として提示しうるレベルには到達できなかったため、その点を今後の課題としたい。


 なお、具体的な分析結果の検討については、本ブログの後続する以下の記事を参照されたい。また、分析結果の詳細については、以下の1.6.アーカイブファイルに含まれるファイルの説明の項に記載の通り、結果をアーカイブ化したものがダウンロード可能である。
1.6.アーカイブファイルに含まれるファイルの説明

和音出現頻度分布.zipの中には以下のファイルが含まれます。

  (1)マーラー交響曲の区分表
  • gm_classification.pdf:マーラーの交響曲の区分の比較表
  (2)和音出現頻度表
  • gm_cfrq.pdf:曲(楽章)毎の和音出現頻度のグループ合計に基づく和声出現割合
  • gm_cfrq_ave.pdf:曲(楽章)毎の和音出現割合のグループ平均に基づく和音出現割合
  (3)和音出現頻度分布の箱ひげ図
  • boxplot_cfrq_gm.pdf:分析対象のマーラー作品全体のboxplot
  • boxplot_cfrq_gm_sym.pdf:マーラーの交響曲全体のboxplot
  • boxplot_cfrq_gm_sym1.pdf:第1交響曲のboxplot
  • boxplot_cfrq_gm_sym2-4.pdf:第2~4交響曲のboxplot
  • boxplot_cfrq_gm_sym5-7.pdf:第5~7交響曲のboxplot
  • boxplot_cfrq_gm_sym8.pdf:第8交響曲のboxplot
  • boxplot_cfrq_gm_LE-9-10.pdf:「大地の歌」,第9,10交響曲のboxplot

他の作曲家との比較_再分析.zipの中には以下のファイルが含まれます。

(1)入力データ
 control+gm_A_cfrq.csv:分析対象の和音(コード)の出現割合
 control+gm_A_cfrq.csv:分析対象の和音(コード)のファイル毎の平均出現割合
 control+gm_A_col_cfrqA.csv:対象作曲家の色指定
 control+gm_A_label_cfrqA.csv:対象作曲家の非階層クラスタ分析用ラベル
 control+gm_A_class_cfrqA.csv:対象作曲家の時代別分類ラベル

(2)主成分分析系
 prcomp_F.pdf:主成分分析(scale=F)結果のbiplotグラフ
 gg_prcomp_F_12.pdf:主成分分析結果(第1,第2成分)のggbiplotグラフ
 gg_prcomp_F_23.pdf:主成分分析結果(第2,第3成分)のggbiplotグラフ
 gg_prcomp_F_34.pdf:主成分分析結果(第3,第4成分)のggbiplotグラフ
 pr_score-[1-4].pdf:主成分得点のbarplotグラフ
 prcomp_PC[1-4].pdf:主成分負荷量のbarplotグラフ

(3)階層クラスタ分析系:
 kmeans6.csv:k-means法、クラスタ数=6での分類結果
 kmeans6.pdf:k-means法、クラスタ数=6での分類結果のclusplotグラフ

(4)階層クラスタ分析系:
 hclust_complete.pdf:complete法での分類結果
 hclust_average.pdf:average法での分類結果
 hclust_wardD2.pdf:ward法での分類結果
  
(5)分析履歴
 hist.txt:R言語を用いた分析履歴。各分析の数値的な結果を含む。


[ご利用にあたっての注意] 公開するデータは自由に利用頂いて構いません。あくまでも実験的な試みを公開するものであり、作成者は結果の正しさは保証しません。このデータを用いることによって発生する如何なるトラブルに対しても、作成者は責任を負いません。入力として利用させて頂いたMIDIファイルに起因する間違い、分析プログラムの不具合に起因する間違いなど、各種の間違いが含まれる可能性があることをご了承の上、ご利用ください。  

(2021.11.24 暫定版公開, 11.26仮公開, 11.27公開, 11.29分析結果の要約を追加)