アマチュア・オーケストラ演奏頻度(2023.12.28更新)

アマチュア・オーケストラの演奏会情報サイトi-amabile (https://i-amabile.com/)掲載のデータ(1970年以降、2023年12月31日迄)に基づくアマチュア・オーケストラによるマーラー作品の演奏頻度のグラフです。
ここでの目的は、アマチュア・オーケストラでのマーラー演奏の傾向の時系列での変遷を眺めることにあるため、集計基準や単位などがi-amabileの集計とは異なります。

[追記]新型コロナウィルス感染症の影響は、アマチュア・オーケストラの演奏会開催についても大きな影響を及ぼしています。i-amabileに掲載されたマーラーの作品の演奏会の記録は2020年3月1日を最後に途絶え、現時点(2020年6月23日現在)では再開されていません。当初2020年9月に延期されることが告知されていた、井上喜惟指揮・マーラー祝祭オーケストラによる第3交響曲のコンサートは、その後、2021年5月9日に再延期されることになったようです。そしてそれが現時点でi-amabile上で今後の開催予定が告知されている唯一のマーラー作品の演奏会となっています。(2020.6.23)
 その後、緊急事態宣言が解除された後、観客数を制限した形でのコンサートが徐々に行われるようになりましたが、2020年末から2021年初めにかけて、いわゆる第3波の感染拡大が起きて、再び緊急事態宣言が発令されることになり、最初の緊急事態宣言が解除された後、2020年度中に開催されたことがi-amabile上で確認できるコンサートは僅かに1回、作品としては交響詩「葬礼」が演奏されたのみとなりました。結果として2020年度の演奏回数はわずかに15回を数えるのみとなり、約20年前の2003年以来の水準となりました。
 2021年になっても、2回目の緊急事態宣言の最中の1月中に2回の演奏会が開催されたことが確認でき、その後緊急事態宣言は解除されたものの、解除の時点では既に感染再拡大の傾向が明らかであり、程なくして蔓延防止等重点措置が導入されるに至って、引き続き予断を許さない状況が続いています。(2021.4.11)
 その後の2021年の前半の状況としては、観客を入れてのコンサートは、4月18日にみなとみらい21交響楽団 第20回定期演奏会で第9交響曲が演奏された後、デルタ株による感染再拡大が顕著となる直前の5月9日に、再延期となっていた井上喜惟指揮・マーラー祝祭オーケストラによる第3交響曲のコンサートが実施されたのみで、無観客での公演となった4月28日の東京外国語大学管弦楽団 第100回記念定期演奏会での交響曲第5番アダージェットの演奏を含めてもわずか3回(1月の2公演と併せても5回)の公演のみとなりました。後半になり、感染のピークを過ぎるにつれてようやくコンサート開催が再開されるようになりましたが、結局11公演でのべ13曲が演奏されるにとどまり、2021年も2020年と同様、約20年前の2003年以来の水準が続きました。
 2022年初頭の状況としては、新型変異株(オミクロン株)の影響が引き続き懸念されているものの、1月15日の坂入健司郎指揮・東京ユヴェントス・フィルハーモニー 活動再開記念演奏会での第2交響曲の演奏を皮切りに、既に幾つかのコンサートの開催が予告されている状態です。(2022.1.3)
 2022年になると、年初の第6波の流行の後、かつてない規模とスピードで感染拡大した夏場の第7波が続き、更に年末から翌年の年明けにかけては第8波の流行の只中にあります。ワクチンの副反応がクローズアップされたことから、3回目および感染力が極めて強い変異株であるオミクロン株が主流になっているにも関わらずワクチンの接種率は昨年には遠く及ばない状況にあることもあって、感染の規模は寧ろ2022年になってからの方が拡大した結果、重症者や死者の割合こそ減ったものの、絶対数としては前年に比べて改善したとは到底言い難い状況にあります。一方で(こちらもまた、感染の爆発的拡大に直接的に関わらない迄も、治療薬が普及したわけでもなく、感染後の後遺症の問題は未解決であるにも関わらず、恰も既に危機は去り問題は解決したかの如き風潮を後押ししている側面を否定することはできないでしょうが)コンサート等のイベント開催に関する規制は緩和され、今や客数の制限もなく、舞台上でのソーシャルディスタンス確保も既に過去の話となっていて、マーラーの作品演奏についてはさすがに以前と同等の水準に一気に戻るという訳には行かないものの、既に底を打って、概ね「ポスト・コロナ」のフェーズに入ったとは言えるのではないかと思われます。(2022.12.25)
 従来、(1)交響曲、(2)異稿・抜粋・断片、(3)合唱曲・歌曲に分けてグラフを作成していましたが、そうすると2019年の年末に発生し、2020年になって世界全体に感染が拡大した新型コロナウィルスの影響によるコンサートの減少の影響について、若干ミスリードになることに気付いたため、全体の合計のグラフを最初に示すようにしました。問題の年は2003年で、全体では前年の2002年に続いて1999年以降の増加傾向が途切れた時期にあたります。何故かこの2003年は交響曲の演奏回数が非常に少なく、これはこれで原因の考察が必要でしょうが、交響曲だけ取ればその2003年に匹敵するような落ち込みが2021年に生じたことになります。一方、全体をグラフ化すると、落ち込みは2020年、2021年の2年間に亘っていること、更にそれは2002年、2003年の2年以来の落ち込みであることが示され、コンサート開催の全般的な傾向としてはこちらの方がより実感に即しているように思えます。また新型コロナウィルス感染症の影響により、前回同様2年に亘る停滞が見られたのですが、前回は2年目の2003年の交響曲演奏の落ち込みを補完したのが合唱曲・歌曲だったのに対して、今回は2年目の2021年の落ち込みを補完したのが寧ろ異稿・抜粋・断片であったことが窺える点も興味を惹くところではないかと思われます。(2022.12.30)
 2023年は、5月8日以降、新型コロナウィルス感染症の感染法上の扱いが第5類感染症に移行したことに伴い、コンサートも以前と同様に行われるようになった、いわゆる「正常化」の年として記憶されることになるのであろうと思います。そしてこのことはマーラーの作品のアマチュアオーケストラによる演奏頻度からも読み取ることができ、全作品の演奏回数の累計では、概ね2010年代の演奏回数まで戻ってきていることがグラフから明確に読み取れると思います。交響曲では第1,5,9交響曲に集中した一方で、「嘆きの歌」、「さすらう若者の歌」、「花の章」、ピアノ四重奏曲断章と、初期作品が取り上げられることが多かったように思えます。(2023.12.28)






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