上述のハレ管の演奏と同じ年の約2ヶ月前のベルリンでのライヴ。これはステレオ録音で
あり、第2番、第6番のライブと音響上の印象はやや異なる。
興味深いのは、ハレ管弦楽団との録音に比べてこちらの方がテンポがゆったりとしていることだ。
それでいて全体の印象としてはハレ管との演奏の方が「ゆらぎ」が大きい印象がある。
ただしこの曲についてはベルリン・フィルの演奏でもはっきりとわかる事故は起きているし、
私の印象ではハレ管の方が少なくともバルビローリの様式の表現という点では勝っている
ように思われる。
けれどもそれと演奏から聴き手が受け取る感動はまた別の次元の問題だ。感動の度合いは
ハレ管の演奏と甲乙つけ難いものがある。特に第6楽章において第1楽章が回想される「深淵」の部分を
過ぎた後、練習番号25番から始まる最終部分、とりわけ練習番号28のImmer breiter以降の
ベルリン・フィルならではの豊かな響きとゆったりとしたテンポ設定が相俟った音楽の
高潮は圧倒的なもので、オーケストラが「入った」状態になるのが録音を通してすら
手にとるようにわかる。聴いていて、いわゆる「ぞっと身震いが起きる」瞬間だ。
例によって足早な、けれども確信に満ちたコーダは真に「感動的な」もので、その感動は
恐らく指揮をしているバルビローリも含めた奏者も、会場の聴き手も共有したものに
違いない。会場の深い感動までありありと伝わる貴重な記録である。その感動を35年も
経った後に、遠く隔たった地で共有するのは考えてみれば不思議な経験である。
決して演奏の精度は高くないし、録音の状態も良いとは言えず、加えて様式的には
個性的過ぎて、受け入れ難い向きもあるかとは思うが、感動の深さにおいてはバルビローリの
ライブの演奏記録の中でも屈指のものではないかと思う。
0 件のコメント:
コメントを投稿