1970年のライブに続いて今度は1965年のベルリンフィルとの演奏がCDでリリースされた。
こちらはモノラル録音だが聴くのに大きな支障は感じない。ただしこのような大規模な
作品の場合、特にフィナーレの頂点の部分のダイナミクスや音響のバランスが損なわれて
しまうのは致し方ないこととはいえ、残念なことではある。
演奏自体についていえば、単純に「事故」が少ないだけであったとしても、録音されたものを
繰り返し聴くということになればそれなりの価値を持つことになるのだろうが、それだけで
なく、合奏の精度の面からも、バルビローリの意図の実現という面からも、
1970年の録音に比べて全体としてこちらの方が成功していると感じられる。
解釈の基本線に大きな隔たりはない。ただしオーケストラの体質のせいもあってか、
バルビローリの持っている資質のうち、念入りな歌いまわしよりは、わかりやすく
ストレートと言っても良い、率直な曲の運びの方が前面に出た演奏に思える。
表現も叙情的である以上にある種の鋭さを備えていて、聴き手の心に突き刺さるかの
ようだ。フィナーレの音楽の高潮は真正なもので、実演ですら一度ならず「取り残された」
経験のある私は(些か大げさだが)救われたような思いで聴いた。
私はこの演奏を聴いてみて、バルビローリの特にマーラー演奏におけるオーケストラの
資質の寄与の大きさに改めて気付かされた。恐らく第3交響曲や第6交響曲では、
前者のハレ管弦楽団、後者の(スタジオでの)フィルハーモニア管弦楽団と、
ベルリンフィルとの比較によって、それがよりはっきりするのだろうが、
そうしてみると第9交響曲がベルリン・フィルとの演奏のみで残っていることが
個人的には残念な気もする。スタジオ録音にはレコード会社のラインナップ上の
制約が働くので仕方ない部分もあるのだが、ハレ管弦楽団とではなくても、
例えばフィルハーモニア管弦楽団との第9交響曲はどんなものになっただろうか、
という思いを禁じることができない。これはベルリンフィルとの演奏に不満があると
いうことではなく、フィルハーモニア管弦楽団のようなイギリスのオーケストラとの
演奏であれば、ベルリンフィルとの演奏では前面に出なかった、バルビローリの
持つ別の側面、例えばあの素晴らしい第5交響曲に現れていた資質がはっきりと
現れた演奏になったのではないかと思うのである。
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