2002年4月30日火曜日

バルビローリのマーラー:第2交響曲・シュトゥットガルト放送交響楽団(1970)

1970年4月のライブを南西ドイツ放送局が録音したものが最近CDになってリリースされたもの。 バルビローリはいわゆるスタジオ録音ではこの曲を残していないので、この曲に関しては 貴重な音源だ。オーケストラがシュトゥットガルト放送交響楽団というのも珍しい。 特に晩年のバルビローリはベルリン・フィルやウィーン・フィルだけでなく大陸の 色々なオーケストラに客演しているようで、最近、そのライブ録音がリリースされる ようになった。
この演奏はライブ特有の演奏上の疵が聴く人によっては許容範囲をはっきりと超える程 大きく、CDでの観賞の妨げになる場合もあるのではと思う。私はあまりそういう疵に 頓着しない方だが、流石にこの演奏は些か気になってしまった。
これまた最近リリースされたコンセルトヘボウ客演の記録も、疵というか、意思疎通の 限界のようなものが感じられるように感じられ、気になったのだが、バルビローリの ような本来、入念な準備によって緻密で、幾分個性的な解釈を与えていくタイプの指揮者の 場合、客演での演奏は必ずしも常にバルビローリの意図を徹底するに至らない場合もあるのでは なかろうか。必ずしもライブがだめで、(かつては可能であった)スタジオでの入念な 作業なしでは真価が発揮できないというわけではないのは、BBCからリリースされている他の ライブ録音で聴かれる見事な演奏が証している。例えばハレ管弦楽団のような、バルビローリの 個人的な様式に馴染んだオーケストラが、バルビローリとともに弾き込んだレパートリーを やれば、スタジオ録音を上回るような充実した演奏が可能なのだ。
それではこの演奏は全く価値がないのかと言われると、それは決してそうではない。 勿論バルビローリの演奏スタイルが無上の説得力を生み出す瞬間がそこかしこにあって、 演奏会場にいて聴いたら、確実に圧倒されたに違いない。些か大仰で下手をすると 空虚にさえ響きかねないフィナーレ(私はさる実演でしらけてしまうという、信じがたい 経験をしたことがある。)は、ここでは確かな手ごたえを持っている。
かつてマーラー自身がこの曲を振った時にも、本人の頭痛のせいもあって演奏の制御が十分で なかったにも関わらず、奏者も聴衆も圧倒されたというエピソードがあったと記憶しているが、 それを思い起こさせるような、大変な力に満ちた演奏である。

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