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2024年8月5日月曜日

MIDIファイルを入力とした分析:和音の出現頻度に基づくリターンマップ

 1.はじめに

 MIDIファイルを入力とした分析の直近の記事「MIDIファイルを入力とした分析:五度圏上での和音重心の原点からの距離の遷移のリターンマップ」では、サンプリングした各時点(報告例においては、各小節頭拍)における和音(ピッチクラスセット)について、五度圏の空間における原点座標からの距離を求め、この距離の系列のリターンマップを書いてみました。

 ここでは既に何度か分析の対象としてきた和音(ピッチクラスセット)の出現頻度に基づくリターンマップを書いてみましたので、その結果を報告します。

 対象とする和音(ピッチクラスセット)の系列は前回同様、各小節頭拍毎の系列(従来より本ブログの分析でB系列と呼んできたもの)を用いました。リターンマップの軸(横軸は時刻f、縦軸は次の時刻t+1を表します)の定義については、出現頻度をそのまま用いるのではなく、出現頻度により和音(ピッチクラスセット)の順位付けを行い、その順位を用いることにしました。従って、原点に近ければ近い程、出現頻度が高い和音(ピッチクラス)であることになります。また、軸に頻度を直接とるのではなく、順位を軸にとることは、頻度分布がzipfの法則のような冪乗則に従う場合には、概ね対数軸に変換していることになります。

 リターンマップを作成する単位については、度圏上での和音重心の原点からの距離の遷移のリターンマップと同様に、楽章単位としました。また対象とする作品については、従来よりサンプルとして用いてきた歌曲「私はやわらかな香りをかいだ」以外については、「大地の歌」および第10交響曲のクック版を含めた11曲の交響曲の各楽章としました。出現頻度の順位の定義については、以下の2種類を用いました。

  • 全交響曲累計での出現頻度に基づくもの(frq1)
  • 各交響曲毎の出現頻度に基づくもの(frq2)

2.公開するデータの見方の説明

公開しているアーカイブファイル:ReturnMap_sym_B_frq.zipを解凍するとExcel ブック形式のファイル ReturnMap_sym_B_frq1.xlsx およびReturnMap_sym_B_frq2.xlsx が出てきます。これらのファイルは、シート毎に、上記の分析対象となった作品(「私はやわらかな香りをかいだ」と交響曲、交響曲は楽章毎)について入力となった情報と結果が収めされています。ReturnMap_sym_B_frq1.xlsxは全交響曲累計での出現頻度に基づくもの、ReturnMap_sym_B_frq2.xlsxは各交響曲毎の出現頻度に基づくものです。

各シートの内容は以下の通りです。

Sheet1:各列が、各作品(交響曲の場合は楽章)の和音(ピッチクラスセット)の各小節頭拍の系列を表します。行の定義は、MIDIファイルを入力とした分析の準備(2):和音の分類とパターンの可視化 に準じますが、ここでは1行目のラベルと10行目以降の系列本体だけを使用しています。

Sheet2:frq2の場合、各列が、各作品(交響曲の場合は楽章)の和音を出現頻度の降順に並べたものになります。frqは全交響曲累計での音を出現頻度の降順に並べたものが1列だけ存在します。それぞれ1行目が系列末の行番号(=系列長-1)、2行名以降が和音の番号になります。元となるデータはSheet4に収められています。Sheet2の行番号-1が、リターンマップの軸の座標値になります。

Sheet3:Sheet1をSheet2に基づいて、リターンマップの座標値に変換したものになります。各列が各作品(交響曲の場合は楽章)のリターンマップ上の軌道を表します。

Sheet3a(ReturnMap_sym_B_frq2.xlsxのみ):各交響曲毎の出現する和音(ピッチクラスセット)の種別数(異なり数)および全交響曲累計での出現する和音(ピッチクラスセット)の種別数(異なり数)をグラフ化したものです。m1~m10が交響曲第1番~10番、erdeが「大地の歌」、allが全交響曲での累計です。


Sheet4:Sheet2の元となる、和音(ピッチクラスセットの)出現頻度を集計単位毎に降順に並べ替えたものになります。ReturnMap_sym_B_frq1.xlsx では全交響曲の全楽章累計の出現頻度でのソート、ReturnMap_sym_B_frq2.xlsx では各交響曲毎の出現頻度でのソートをした結果になります。和音のうち主要なものについてはラベルを付記してあります。 

以下のシートは各交響曲楽章毎のリターンマップの作成結果を収めています。各シート名と作品の対応は以下の通りです。

  • mX_Y(X:交響曲通番、Y:楽章):第1交響曲~第9交響曲
  • erde_1~erde_6:「大地の歌」
  • m101~m105:第10交響曲(クックによる5楽章版)
  • duft:「私はやわらかな香りをかいだ」(参考)
例として、第9交響曲第1楽章(m9_1)の全交響曲累計での出現頻度に基づくリターンマップ(frq1)、及び第9交響曲における出現頻度に基づくもの(frq2)を示します。いずれも1列目がリターンマップのx座標、2列目がリターンマップのy座標の値となります。全交響曲累計での出現頻度に基づくリターンマップは、全交響曲累計での出現する和音(ピッチクラスセット)の種別数(異なり数)で軸を揃えています。各交響曲毎の出現頻度に基づくリターンマップは、各交響曲全体での種別数(異なり数)で軸の最大値を交響曲毎に変えています。


全交響曲累計での出現頻度に基づくリターンマップ(frq1):総種別数(異なり数)=231

第9交響曲における出現頻度に基づくリターンマップ(frq2):総種別数(異なり数)=137


[ご利用にあたっての注意] 公開するデータは自由に利用頂いて構いません。あくまでも実験的な試みを公開するものであり、作成者は結果の正しさは保証しません。このデータを用いることによって発生する如何なるトラブルに対しても、作成者は責任を負いません。入力として利用させて頂いたMIDIファイルに起因する間違い、分析プログラムの不具合に起因する間違いなど、各種の間違いが含まれる可能性があることをご了承の上、ご利用ください。
(2024.8.5公開)

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