2023年8月7日月曜日

MIDIファイルを入力とした分析の準備(5):状態遷移の集計結果の公開(補遺)

   1.本稿の主旨

 MIDIファイルを入力とした状態遷移プロセスの分析に着手すべく実施した状態遷移の集計手法の検討の内容および、それに基づいたマーラーの交響曲のMIDIファイルを対象とした集計結果について、MIDIファイルを入力とした分析の準備(3):状態遷移の集計手法の検討と集計結果の公開およびMIDIファイルを入力とした分析の準備(4):集計結果の公開(続き)にて報告し、集計結果の公開を行ってきました。

 本稿では、前2回の内容をうけて、交響曲毎ではなく、全交響曲についての状態遷移の集計結果を報告します。単に交響曲単位であった前2回の集計結果をマージしただけではありますが、状態遷移のパターン数にして数万にもなり、それなりの規模のデータであること、交響曲全体での状態遷移パターンとその頻度(出現確率)があれば、個別の交響曲の特徴や、これまで和音の出現頻度を用いて行ってきたような、創作の時代区分に対応した傾向などといった分析を行うことができるなど、今後行っていく分析の基本データとして意義があるものと考えて、補遺として公開することとしました。

 (ここで本稿まで3回の記事で公開したデータを集計してみての素朴な感想を述べさせて頂くならば、和音の出現頻度の時と異なって、そもそもどれくらいの数の状態遷移パターンが出現しているのか、深さによってパターン数がどう変わっていくかなど、実際に集計してみるまで、定量的な側面について殆ど勘が働かない領域のデータ集計であり、分析以前に、集計結果に関するごく基礎的な特徴の把握自体、少なくとも私個人にとっては意味があるように感じられました。更に本稿で公開するデータは、マーラーの交響曲全体に関する、その音楽における和音の状態遷移パターンの出現頻度であり、大幅に単純化した上でとはいえ、まさしく「マーラー・オートマトン」の出力に他ならず、例えばこのデータに基づいた機械学習によって「マーラー・オートマトン」の主要な次元における軌道についてのシミュレータを作成できる可能性に繋がるといった具合に、様々な可能性を内蔵したデータであると思います。)

 分析の方針であるとか、条件であるとかについては、前2回の分析で述べたものと同一ですので、ここでは繰り返さず、上掲の前の記事を参照頂けるようお願いします。


   2.公開ファイルの内容

 以下、公開するファイルの説明を行います。従来通り、集計は以下の4パターンの和音(ピッチクラスの集合)の系列を入力として行いました。

  • 各拍頭(A)/単音・重音の拍は対象外(cdnz3)
  • 各小節頭拍(B)/頭拍が単音・重音の小節は対象外(cdnz3)
  • 各拍頭(A)/単音・重音の拍を含む(cdnz)
  • 各小節頭拍(B)/頭拍が単音・重音の小節を含む(cdnz)

 更に上記のそれぞれについて、まず入力系列においては、和音のパターン、五度圏上での位置の違いと転回形の区別を持った入力系列を生成し、状態遷移パターンの抽出において下記の3パターンのそれぞれについて集計を行ったものの集計を行いました(MIDIファイルを入力とした分析の準備(3):状態遷移の集計手法の検討と集計結果の公開で公開した集計結果に対応)…(1)
  • 全ての和音について転回形を区別せず。(default)
  • 長短三和音のみ転回形を区別。(tonic)
  • 全ての和音について転回形を区別。(inv)

 次いで上記の3つのパターンを入力系列を生成する際に生成する際の条件として、3種類の和音の系列を生成し、それぞれについて状態遷移パターンの集計を行いました(MIDIファイルを入力とした分析の準備(4):集計結果の公開(続き)で公開した結果に対応)…(2)

 本稿で公開するアーカイブファイルは以下の2つで、それぞれ4ファイルよりなります。

(1)交響曲全体での和音遷移パターン出現頻度(1).zip

 和音のパターン、五度圏上での位置の違いと転回形の区別を持った入力系列に対する状態遷移パターン集計で転回形の区別に応じた3パターンでの集計を行った結果。

  • synall_A_inv_cdnz.xlsx:各拍頭/単音・重音の拍を含む。以下の4シートからなります。
    • sym_A_cdnz_inv_default:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_A_cdnz_inv_inv:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。
    • sym_A_cdnz_inv_tonic:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
    • sym_A_frq_inv:深さ0に相当する和音出現頻度
  • synall_A_inv_cdnz3.xlsx:単音・重音の拍は対象外。以下の4シートからなります。
    • sym_A_cdnz3_inv_default:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_A_cdnz3_inv_inv:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。
    • sym_A_cdnz3_inv_tonic:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
    • sym_A_frq3_inv:深さ0に相当する和音出現頻度
  • synall_B_inv_cdnz.xlsx:頭拍が単音・重音の小節を含む。以下の4シートからなります。
    • sym_B_cdnz_inv_default:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_B_cdnz_inv_inv:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。
    • sym_B_cdnz_inv_tonic:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
    • sym_B_frq_inv:深さ0に相当する和音出現頻度
  • synall_B_inv_cdnz3.xlsx:頭拍が単音・重音の小節は対象外。以下の4シートからなります。
    • sym_B_cdnz3_inv_default:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_B_cdnz3_inv_inv:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。
    • sym_B_cdnz3_inv_tonic:深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
    • sym_B_frq3_inv:深さ0に相当する和音出現頻度
深さ1~5の状態遷移パターン出現頻度のシートのフォーマットは共通で、以下の通りです。
  • A,B列:未使用
  • C~E列:深さ=1の状態遷移パターン(C~D)と頻度(E)。C列1行目はパターン数。
  • F~I列:深さ=2の状態遷移パターン(F~H)と頻度(I)。F列1行目はパターン数。
  • J~N列:深さ=3の状態遷移パターン(J~M)と頻度(N)。J列1行目はパターン数。
  • O~T列:深さ=4の状態遷移パターン(O~S)と頻度(T)。O列1行目はパターン数。
  • U~AA列:深さ=5の状態遷移パターン(U~Z)と頻度(E)。U列1行目はパターン数。



深さ0に相当する和音出現頻度のシートのフォーマットは共通で、以下の通りです。
  • A,B列:構成音(ピッチクラスの集合)、五度圏上の位置、バスの位置を区別した和音出現頻度。A列1行目はパターン数。
  • C.D列:構成音(ピッチクラスの集合)、バスの位置を区別した和音出現頻度。C列1行目はパターン数(invに対応)。
  • E,F列:構成音(ピッチクラスの集合)を区別し、長短三和音のみバスの位置を区別した和音出現頻度(tonicに対応)。E列1行目はパターン数。
  • G,H列:構成音(ピッチクラスの集合)のみを区別した和音出現頻度(defaultに対応)。G列1行目はパターン数。



(2)交響曲全体での和音遷移パターン出現頻度(2).zip
  入力系列の生成で転回形の区別に応じた3パターンでの構成を行い、それぞれについて状態遷移パターンを集計した結果。
  • synall_A_cdnz.xlsx:各拍頭/単音・重音の拍を含む。以下の3シートを含みます。
    • sym_A_default_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_A_inv_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。synall_A_inv_cdnz.xlsxのsym_A_cdnz_inv_invシートと同一条件の集計結果です。
    • sym_A_tonic_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
  • synall_A_cdnz3.xlsx:単音・重音の拍は対象外。以下の3シートからなります。
    • sym_A_default_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_A_inv_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。synall_A_inv_cdnz3.xlsxのsym_A_cdnz3_inv_invシートと同一条件の集計結果です。
    • sym_A_tonic_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
  • synall_B_cdnz.xlsx:頭拍が単音・重音の小節を含む。以下の3シートからなります。
    • sym_A_default_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_A_inv_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。synall_B_inv_cdnz.xlsxのsym_B_cdnz_inv_invシートと同一条件の集計結果です。
    • sym_A_tonic_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
  • synall_B_cdnz3.xlsx:頭拍が単音・重音の小節は対象外。以下の3シートからなります。
    • sym_A_default_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別せず。
    • sym_A_inv_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。全ての和音について転回形を区別。synall_B_inv_cdnz3.xlsxのsym_B_cdnz3_inv_invシートと同一条件の集計結果です。
    • sym_A_tonic_cdnz:深さ0~5の和音・状態遷移パターン出現頻度。長短三和音のみ転回形を区別。
各シートのフォーマットは共通で、以下の通りです。
  • A,B列:深さ=0に相当する和音(A)と頻度(B)。A列1行目は和音の種別数。
  • C~E列:深さ=1の状態遷移パターン(C~D)と頻度(E)。C列1行目はパターン数。
  • F~I列:深さ=2の状態遷移パターン(F~H)と頻度(I)。F列1行目はパターン数。
  • J~N列:深さ=3の状態遷移パターン(J~M)と頻度(N)。J列1行目はパターン数。
  • O~T列:深さ=4の状態遷移パターン(O~S)と頻度(T)。O列1行目はパターン数。
  • U~AA列:深さ=5の状態遷移パターン(U~Z)と頻度(E)。U列1行目はパターン数。





[ご利用にあたっての注意] 公開するデータは自由に利用頂いて構いません。あくまでも実験的な試みを公開するものであり、作成者は結果の正しさは保証しません。このデータを用いることによって発生する如何なるトラブルに対しても、作成者は責任を負いません。入力として利用させて頂いたMIDIファイルに起因する間違い、分析プログラムの不具合に起因する間違いなど、各種の間違いが含まれる可能性があることをご了承の上、ご利用ください。(2023.8.7公開)


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