2023年7月30日日曜日

所蔵録音覚書:「嘆きの歌」(2023.12.28 更新)

  • 嘆きの歌(改訂稿), フェケテ, ウィーン交響楽団 / ウィーン室内合唱団 / シュタイングリューバー(Sp.) / ヴァグナー(MS.) / マイクート(Tn.), 1951, (18:06, 20:05), ウィーン, MONO, Mercury
  • 嘆きの歌(改訂稿), フリッツ・マーラー/ ペトラック(Tn) / ホズウェル(Sp) / チュークシアン(MS) / ハートフォード公共合唱団, ハートフォード交響楽団, 1959, (15:58, 17:43), ハートフォード、ブッシュネル・メモリアル・オーディオリウム, MONO, VANGUARD
  • 嘆きの歌(改訂稿), リヒター, ウィーン放送交響楽団 / オーストリア放送合唱団 /  ヤノヴィッツ(Sp.) / ドランクスラー(MS.) / パツァーク(Tn.), 1960, (16:38, 18:21), ウィーン, MONO, archipel
  • 嘆きの歌(改訂稿), モリス / レイノルズ(Tn) / ツィリス=ガラ(Sp) / カポシ(MS) / アンブロジアン・シンガーズ, ニュー・フィルハーモニア管弦楽団, 1967.4.1-2, (18:40, 20:02), ロンドン、ワトフォード・タウン・ホール, MONO, NIMBUS
  • 嘆きの歌(改訂稿), ブーレーズ, ロンドン交響楽団 / ロンドン交響合唱団 / リアー(Sp.) / バローズ(Tn.) / シュテット(Br), 1969.5.26/27, (19:37, 20:48), ロンドン、ウォルサムストウ・タウンホール, STEREO, CBS-Sony
  • 嘆きの歌(初稿第1部), ブーレーズ, ロンドン交響楽団 / ロンドン交響合唱団 / ゼーダーシュトレーム(Sp.) / ホフマン(MS.) / ヘフリガー(Tn.) / シュテット(Br), 1970.4.22, (30:08), ロンドン、ワトフォード・タウンホール, STEREO, CBS-Sony
  • 嘆きの歌(改訂稿), ブーレーズ, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 / ウィーン国立歌劇場合唱団 / レッシュマン(Sp.) / ラーション(A.) / ボタ(Tn), 2011.7.31(Live), (5:35/5:40/5:31, 4:01/4:52/2:32/1:08/6:15), ザルツブルク、祝祭大劇場, STEREO, Deutsche Grammophon
  • 嘆きの歌(改訂稿), ヘルベルト・アーレンドルフ / イヴォ・ジーデク(Tn) / マルタ・ボハコヴァー(Sp) / ヴェラ・ソウクポヴァー(MS) / チェコ・フィルハーモニー合唱団、プラハ交響楽団, 1971.12.21-22, (16:55, 19:25), プラハ、ツォリーン・ホール, MONO, Supraphon
  • 嘆きの歌(改訂稿), ハイティンク / ヴェルナー・ホルヴェグ(Tn) / ヘザー・ハーパー(Sp) / ノーマン・プロクター(MS) / アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団, 1973.2.17-18, (18:40, 19:30), アムステルダム、コンセルトヘボウ, STEREO, Philips
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿)), ロジェストヴェンスキー, BBC交響楽団 / BBCシンガーズ、BBC交響合唱団 / カヒル(Sp.) / ベイカー(MS.) / ティアー(Tn.) / ハウエル(Bs.),  1981.7.20(Live), (28:15, 15:55, 18:37), ロンドン、アルバートホール(プロムス), STEREO, BBC radio classics
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿), ラトル, バーミンガム市交響楽団 / バーミンガム市交響合唱団 / デーゼ(Sp.) / ホジソン(MS.) / ティアー(Tn) / リー(Bs.), 1983.10.12-13/1984.6.24, (28:38, 17:38, 18:57), バーミンガム、タウン・ホール, STEREO, EMI
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿), ケーゲル, ライプチヒ放送交響楽団 / ライプチヒ放送合唱団, ハヨーショヴァー(Sp.) / ラング(A.) / コロンディ(Tn.) / クルト(Bs.), 1985.10.7 (Live), (26:56, 17:07, 18:20), ライプチヒ、ゲヴァントハウス, STEREO, querstand
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿), シャイー, ベルリン放送交響楽団 / デュッセルドルフ州立楽友協会合唱団 / ダン(Sp.) / ファスベンダー(MS.) / バウアー(Boy Alto) / ホルヴェグ(Tn) / シュミット(Bs.), 1989.3.28-30, (28:08, 17:38, 18:32), ベルリン、イエス・キリスト教会, STEREO, Decca
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿), シノーポリ, フィルハーモニア管弦楽団 / ステューダー(Sp.) / マイヤー(A.) / ゴールドベルク(Tn.) / アレン(Bs.) / 晋友会合唱団, 1990.11(Live), (27:38, 17:43, 19:32), 東京、東京藝術劇場大ホール, STEREO, Deutsche Grammophon
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿), ヒコックス, ボーンマス交響楽団 / バス祝祭合唱団、ウェインフリート合唱団 / ロジャース(Sp.) / フィンニー(A.) / ブロホヴィッツ(Tn.) / ヘイワード(Bs.), 1993.7.24-25(Live), (30:31, 18:11, 20:04), プール、ウェセックスホール, STEREO, chandos
  • 嘆きの歌(初稿第1部+改訂稿), マリーナ・シャグチ(Sp.)/ ミシェル・デ・ヤング(MS.)/ トーマス・モーザー(Tn.), セルゲイ・レイフェルクス(Br.)/ サンフランシスコ交響合唱団 / ティルソン=トーマス, サンフランシスコ交響楽団, 1996.5.29-31&6.2(Live), (30:25, 16:55, 19:39), サンフランシスコ、デイヴィス・シンフォニー・ホール, STEREO, SFSMEDIA
  • 嘆きの歌(初稿全曲), ナガノ, ハレ管弦楽団 / ハレ合唱団ウルバノヴァ(Sp.) / ラッペ(A.) / ブロコヴィッツ(Tn.) / ハーゲゴート(Bs.) / ウェイ(Boy Sp.) / ヤウス(Boy A.), 1997.10.8/12, (27:19, 16:42, 18:25), マンチェスター、ブリッジウォーター・ホール, STEREO, Erato
「嘆きの歌」には少なくとも2つの版が存在する。1880年の3部からなる初稿とその20年後にマーラー自身の指揮で初演され、出版された2部よりなる改訂稿である。改訂稿では初稿の第1部が削除され、各部のタイトルも削除された。しかし、初稿第1部の存在はかなり前から知られており、録音においても実演においても初稿第1部に改訂稿を付け加えた折衷による演奏が永らく一般的だった。全曲通しての1880年版の演奏は、ナガノ指揮ハレ管弦楽団によって1997年に行われ、マーラー協会もラッツ時代の最終稿=決定稿主義から方針を変えて、補巻として1880年稿が出版されることになった。ナガノとハレ管弦楽団の演奏は1880年稿の全曲初演に際して収録されたものである。マーラーの交響的作品の中では圧倒的に録音記録の数が少ない作品であり、編成の大きさも相俟って、他の交響曲がすっかりコンサートのレパートリーに定着した今日でも上演の機会は少ないようで、それには同じ大編成の作品であっても、第2交響曲や第8交響曲のような、或る種の祝祭性のようなものを欠いている一方で、物語的な性格があって歌詞の理解が求められることに加え、内容が悲劇的であることも、そうした演奏頻度の少なさに与っているかも知れない。

 その一方で、マーラーの交響曲全集を完成させるような、所謂「マーラー指揮者」と呼ばれる人でも、「嘆きの歌」をレパートリーとし、録音記録があるのはごく一部に限られるように見える点も留意すべきかも知れない。まずマーラーに直接接したワルター、クレンペラーに「嘆きの歌」の録音記録はないが、その後マーラー・ルネサンスと呼ばれた時期に次々とLPレコードによるマーラー全集を録音していった指揮者の中でも、バーンスタイン、ショルティ、クーベリックは「嘆きの歌」をレパートリーとしていないようで、唯一ハイティンクのみが録音を遺している。後続の世代であるアバド、テンシュテット、インバル、ベルティーニといったマーラー指揮者も「嘆きの歌」は取り上げておらず、ブーレーズが指揮活動に力を入れ始めた頃に、初期稿第1部を録音して(それは1973年の初稿第1部の楽譜の出版にすら先立っている)、初期稿第1部と改訂稿を組合せて演奏する形態の先駆けとなって以来、明らかに重点をおいて取り上げている(後年グラモフォンで「大地の歌」を含む交響曲全集を録音した際には、今度は改訂稿のみを取り上げて録音している)他は、ティルソン=トーマス、シャイー、ラトル、シノポリが「嘆きの歌」をレパートリーとしていることが確認できるくらいだろうか。ちなみにシノポリの演奏は、フィルハーモニア管弦楽団とともに来日してのマーラー・チクルスの一環として取り上げられたものだが、稀曲の日本初演を数多く手がけた若杉は、サントリーホールでのマーラー・ツィクルスでは「嘆きの歌」を取り上げることはなく、ツィクルス完結の翌年に落穂拾いのように東京都交響楽団と取り上げている(1992年11月19日)。

(ギーレンについて、当初私は「嘆きの歌」をレパートリーとしていない、というように書いていたが、その後、1990年6月8日にウィーンのコンツェルトハウスでウィーン放送交響楽団を指揮した公演があることを知った。これもまた、初期稿第1部と改訂稿の組合せの形態での上演であったようだ。私は未入手で、接することができていないが、2020年にはこの公演の演奏記録がCDとして出ているので、その記録に接することもできるようになっているようである。お詫びとともに訂正させていただく。)

 ちなみに「嘆きの歌」の日本初演は1970年9月16日、秋山和慶指揮東京交響楽団、大川隆子、石光佐千子、砂川稔、東京アカデミー合唱団による改訂稿によるものだが、その後上演は途絶え、ようやく1980年代になって再演の機会に恵まれ、今後は初稿第1部と改訂稿による第2部、第3部という、この作品の上演史において永らく採用されてきた形態による演奏(1982年4月7日、小林研一郎指揮東京交響楽団)が行われることになる。初稿版全3部の日本初演は1998年5月の秋山和慶指揮東京交響楽団による演奏で、秋山はその後2013年3月24日にも東京交響楽団と初稿版を取り上げているから、秋山=東京交響楽団のコンビは日本における「嘆きの歌」のスペシャリストと言ってよいように思われる。(2021.5.11追記, 2023.7.30追記, 2023.12.18ギーレンの演奏について訂正の追記)

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