Mahler überschrieb den eigentlichen Sonatensatz Allegro con fuoco - eine Bezeichnung, die sich nicht nur auf den ersten Hauptthemenkomplex bezieht. Symptomatisch für den überaus feurigen Charakter weiter Strecken des Satzes ist ein Detail der Instrumentation: die Becken ertönen wohl nirgends so oft bei Mahler wie in diesem Allegro con fuoco. Takt 331 schreibt Mahler sogar beim Beckenschlag "mit Feuer" vor!
マーラーは事実上のソナタ楽章にアレグロ・コン・フォーコと名づけたが、これは最初の主題群のみを表しているわけではない。楽器編成の内容は、長く引き伸ばされたこの楽章の性格が「強烈な」ものであることを予示しているようだ。他のどの作品よりも頻繁にシンバルが用いられており、331小節目でシンバルを打ち鳴らす部分では、マーラーは「燃え上がるように!」とさえ書いている。
フローロスのマーラー論の上掲部分を備忘のためにここに記録しておくのは、フローロスがこの後「超長調」(Über-dur)に言及しつつ参照しているアドルノがラッツにあてた1960年5月30日付け書簡において、まさにフローロスが 上掲部分で述べている第7交響曲第1楽章の331小節のシンバルについて、ラッツに対して照会をしているのを見つけたからである(Reinhold Kubik & Erich Wolfgang Partsch (hrsg.), Mahleriana : Vom Werden einer Ikone, p.82を参照)。 1960年といえばアドルノがマーラーについてのモノグラフを出版した年だが、アドルノは自著にとって重大な意味を持つことを強調しつつ、当該箇所が古いスコア(49ページ)では"mit Feuer"となっているのが、ラッツが会長を務め、編集をしていたマーラー協会 全集版においては"mit Teller"に変わっていることに関連して、それが単なる誤植なのか、それともマーラーが後にそのように修正したのをラッツが採用したのか、いずれであるかを問い合わせているのである。
私はアドルノのその文章を読んだ時に、反射的に、そう言えばそのことに言及した文章があったなと思って、アドルノの文章をまずはモノグラフ、ついでウィーン講演と順にあたってみて、そうした記述が見つけられないことに当惑した。別の誰かが 言及していたのを勘違いしていたのかと思い、詮索しているうちに、それがフローロスのコメントであることに思い当たり、確認をして備忘のために今こうしてその事実を記録しているのである。
ところでアドルノの照会についてのラッツの返答は掲載されていないので知るべくもないが、実際のところはどうであったのだろう、と思い、手元にある第7交響曲のスコアやファクシミリを調べてみたので、その結果についても書き留めておくことにしたい。 まず音楽之友社刊行のフィルハーモニア版のリプリント(改訂版と銘打たれている)はラッツ編集のマーラー協会全集と同様"mit Teller"が採られている。アドルノの言う「古い版」とおぼしきDoverのリプリント版ではまさにアドルノが 言及している49ページに"mit Feuer"と記されているのが確認できる。一方、ラッツの編集方針に批判的であったことで知られるレートリヒ校訂のEulenburg版はといえば、こちらもまた"mit Teller"を採用している(p.74)。 レートリヒの版は1962年1月に出版され、1960年に刊行された協会全集版を踏まえたものであることがレートリヒの序文に記載されている。
それではファクシミリはどうであろうか。確認したところでは明らかにマーラー本人は"mit Teller"と記入していて、アドルノの照会への答は「"mit Feuer"は単なる誤植である」が正しそうである。"mit Teller"であれば単なる奏法の指示であり、 周辺に頻出する撥で打つ奏法と区別するために注記したものに過ぎず、"mit Feuer"なら主張できるような、そして実際フローロスがしているような、表現とか意味に関する読み込みをするのは明らかに勇み足であったことになる。 もっともこのことは単に傍証としては用いることができないというだけで、フローロスの主張の本筋の妥当性とは一応は区別すべきではあろう。マーラーのスコアの指示の中には、「影のように」とか「嘆くように」といったようなものもあるけれど、 実はそれ以上に演奏上の細かい指示が多く、特に私にとって印象的なのは、指揮者に振り方の注文を事細かにしていることだろうか。「まだ2つ振りで」とか「気付かれないように2拍子に移行する」とかいう指示はマーラー自身が指揮者であり、 自作の初演を行った経緯を物語る。(それを裏付けるように、マーラー自身が演奏することのなかった「大地の歌」「第9交響曲」にはそうした指示がほとんど現れない。)
ともあれちょっとした偶然で判明した本件は、実証的なアプローチを採り自筆譜にもかなりあたっているらしいフローロスとしては珍しく、自筆譜はおろか新しい出版譜の照合すら行わずに古い版のスコアのみにより論旨を組み立てたケースのようなので 備忘として残しておくことにしたい。(2009.12.13)
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